腹黒王子の取扱説明書
「それ、兄に言った?」

「仕事の事じゃないし言ってない」

仕事で嫌がらせされた時は、さすがに俊にも被害がいくし彼に相談した。

でも、相談した次の日に、嫌がらせをした女性社員に出向の辞令が下って、私は逆に彼女に同情した。

出向までさせなくてもって私は俊に言ったけど、彼は冷酷に「社会人なんだから当然の報い」とか言って聞く耳持たなかった。

ロッカーの件も、俊に伝えたらきっと恐ろしい事になりそう。

しばらくロッカーを使わなければ被害はないだろうし、俊には言わないつもりだ。

「そう言えば、受付の女の子の中にも兄狙いの子がいたわね。なるべく一人にならない事」

杏子が真剣な表情で私に忠告する。

「……頭痛が酷くなってきたかも。医務室行ってくる」

「今日、前田先生よ。咳もまだしてるし、少し休ませてもらったら?」

「うん、そうする」

秘書室を出て医務室に向かって廊下を歩いていると、寺沢君に出くわした。
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