腹黒王子の取扱説明書
「中山、ちょっといいか?」

「うん」

寺沢君が私の手をつかんで、何故か空いている会議室に入る。

仕事の確認かなと思ったけど、どこか思い詰めたような表情でじっと私を見つめてきた。

「寺沢君、どうしたの?」

「専務と結婚するってほんと?」

ここでもその話?

「……それデマだから」

私はクスッと笑ってみせる。

「……でも、社長が専務とその話をしてるのを聞いたんだ」

「……聞き間違えじゃない?付き合ってもいないよ」

もう、会社でわざわざそんな話しなくてもいいのに。

そのうち社内に伝わっちゃうよ。

「本当に?俺……中山の事入社した時からずっと…」

寺沢君がいきなり私の両肩をぎゅっと掴む。

なんか……いつもの寺沢君と違う。

怖い……。

「寺沢君、痛いよ。離して」

「嫌だ!俺は中山の事が好きなんだ!」

寺沢君が声を荒げ、私に迫ってくる。
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