腹黒王子の取扱説明書
「寺沢君、止めて!」

寺沢君の胸に手を当てて、私は必死に彼から離れようとした。

その時、突然扉が開いて俊が現れた。

息急ききって入ってきて、私を見るなり寺沢君と引き離す。

「麗奈、探した。医務室に何で行かないの?」

俊に腕を引っ張られ、そのまま彼の胸にダイブする。

「ち、ちょっと、専務!」

「専務じゃない。俊だろ?」

いつになく甘い声で俊が寺沢君に聞こえるように囁く。

でも、次の瞬間には寺沢君に鋭い視線を向け、この場が凍りそうな程冷たい声で告げた。

「俺のに気安く触るな」

……初めて見る俊のこんな表情。

爽やか王子の仮面が剥がれてるんですけど……。

いいの?

怖くて「俺の……」発言の否定も出来ない。

今は俊に逆らってはいけない気がする。

寺沢君も俊を見てすっかり萎縮してるし……。

「行くよ」

俊に腕を引かれ、引きずられるように会議室を出ると壁際に追い込まれた。
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