腹黒王子の取扱説明書
「…聞いてるだけでも痛々しいけど、もう痕とか残ってないの?」

私は右手を専務に差し出し、にっこり笑って見せる。

「化膿止めの薬を飲んだんで、綺麗に治ったんですよ」

「綺麗な手だね」

専務が私の手にそっと触れる。

すると、ビリビリって私の身体に電流が流れるような感覚がした。

何、今の?

静電気みたいだったけど……。

私は手を引っ込めようとしたけど、専務はなかなか離してくれない。

心なしか専務もちょっと驚いた表情になっているような気がするのは気のせいだろうか?

「もうミシンに触れちゃ駄目だよ」

優しくたしなめると、専務は私の手の甲にチュッと口付けた。

「せ…は…長谷部さん!」

動揺して思わず専務って言いそうになっちゃった。

突然、何をするの?
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