腹黒王子の取扱説明書
「気にならない女なら視界にもいれなかったよ。あの時は悪く言ってごめん。俺を捨てた母親と同じ仕事をしてたのが許せなかったんだ」

両手で麗奈の頬に触れると、身を屈めて彼女の額に自分の額をコツンと当てる。

「……あの時は本当に辛かったんですからね」

麗奈が恨みがましく言うが、そんな彼女も愛しいと思う。

「うん、ごめん。だから、うちに引っ越し…‼」

「駄目ですよ。同棲は嫌です」

引っ越して来てと言おうとしたら、いきなり麗奈が俺から離れて俺の唇に人差し指を当てる。

「でも……嫌いじゃないです」

だが、急に俺の目からまた視線を逸らし、小声で呟く。

嫌いじゃないねえ。

「主語抜けてるけど、何が嫌いじゃないの?」

クスッと笑いながら俺は意地悪く問い詰める。

「……わかってるくせに。それわざわざ聞くって意地悪ですよ」

顔を背けている麗奈の耳が赤く染まる。
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