腹黒王子の取扱説明書
いつもいつも私をこんな風に動揺させて……。

「じゃあ、いい子でいるんだよ」

愛しげに私を見つめ、俊はエントランスの前に停車していたタクシーに乗り込む。

タクシーが視界から消えると、フーッと息を吐いた。

「……行っちゃった」

これで一週間は静かでいられる。

ホッとしていいはずなのに……気分が暗いのはなぜだろう。

ボーッとタクシーが消えた方向を眺めていると、海里がポンと肩を叩いてきた。

「愛されてるね。いい加減降参したら?」

「誰が誰に?」

私は横目でキッと海里を睨む。

すっかり俊に懐柔されちゃって。

ムッとなってそう言ったけど、本心では彼の姿が見えなくなってちょっと不安になった。

やっと離れられて清々する。

別れる前まではそう思っていたのに……いざ離れてしまうとなんだか寂しい。

昨日、あのスケベ部長に会ったからかもしれない。
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