腹黒王子の取扱説明書
見てすぐに、素っ気なく【変わりないです】と送信すると、俊からもすぐに【俺がいなくて寂しいでしょう?ニューヨークに着いたらまた連絡する】と返事が返ってきた。

別れて数時間しか経っていないのに、もう俊の声が聞きたいって思う自分はどこかおかしい。

私をからかうあの声が聞きたい。

あの笑顔が見たい。

……何なの?

今まで出張で不在の事なんていくらでもあったのに……。

仕事中なのに頭の中が俊で一杯だ。

心ここにあらずといった状態で業務をこなし、もうすぐ十七時で終業時間というところで私の机の内線が鳴った。

受話器を取ると、杏子が噂していた俊の事が好きだという受付の女の子の声だった。

『ジュピターの片山さんが受付に見えてます』

ジュピターの片山さん?

あのスケベ男は伊澤だし……。

俊の相手ではなさそうだし、須崎さんの打合せの相手だろうか?
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