腹黒王子の取扱説明書
杏子に相談しなくても大丈夫かな?

彼女は会議室の後片付けで席を外しているし……。

「今行きます」

すぐに内線を切って、エレベーターで一階に降りて受付に行くと、メガネをかけたあのスケベ男がいた。

私の姿を見てうっすらと笑みを浮かべる。

ガツンと後ろからハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。

俊の予感が適中した。

……いつ見ても気持ち悪い。

偽名を使うなんて最低。

どうしよう?

このまま引き返せないし……。

「やあ、ナナちゃん。いや、中山麗奈さんだっけ?長谷部専務に会いたいんだけどいるかな?」

……俊がいないと知っるくせに。

知ってるからアポなしでこんな時間に来たんでしょう?

「出張で今日は生憎戻りません。メールでしたら拝見出来るかと思いますので、何かありましたら……‼」
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