腹黒王子の取扱説明書
私が冷ややかに言うと、伊澤は私に近づき私の肩に触れ顔を近づける。

相変わらず口臭が臭い。

私は顔を歪めた。

「今日はお店の方には出勤しないの?」

「何の話でしょうか?何か勘違いされていませんか?」

「勘違い?長谷部専務と一緒に消えたのに?偶然にしては出来すぎてるよね」

伊澤が周囲に聞こえるように、わざと大きな声を出す。

……何が目的なの?

……私を脅そうとしてる?

「会社にあのお仕事バレても良いのかなあ?」

ニヤニヤしながら伊澤が口角を上げる。

「……何が言いたいんです?」

「一晩付き合ってくれたら黙っててあげてもいいよ」

伊澤の言葉に目の前が真っ暗になった。

なんて卑劣な男なんだろう。

私に身体を差し出せって言うの?

「……ご要望にはお応え出来ません。今日は長谷部も須崎もおりませんし、お帰り下さい」

顔を強張らせながらも出来るだけ伊澤の目を見て告げる。
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