腹黒王子の取扱説明書
「よそ見はしないで。それとも、僕よりクリスの方に興味がある?彼は僕の元同僚。お金もあるし、地位もあるけど、女癖は悪いよ」

元同僚と言うことはアメリカにいた時の話だろうか。

ああ、でも今はそんな事考えてる場合じゃない。

一刻も早くこの部屋から出たい。

これ以上専務と一緒にいるのは危険だと本能が告げる。

ふと腕時計に目をやればもうすぐ深夜零時。

良かった。私の勤務時間は十二時までだし、やっと解放される。

「…すみません。申し訳ないのですが、私は十二時までなのでこれで失礼します」

私の言葉に専務がチラリと腕時計を見て、クスッと笑う。

「夜の十二時に帰ろうとするなんてシンデレラみたいだね」

「終電がなくなるからです。だから、離してくれませんか?他の女の子を呼びますから」

今の私には営業スマイルをする余裕もなかった。

早くこの人から離れたい。
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