腹黒王子の取扱説明書
『……一晩付き合ってくれたら……あの仕事の事黙ってるって……』

麗奈の事をあえて婚約者だと言っておいたのに、彼女をそんな風に脅すなんて……俺も相当なめられているようだ。

その場に俺がいたらぼこぼこに殴っていたかもしれない。

「OKしなかったよね?」

思わずちょっと厳しい声になる。

『……はい』

声に生気がない。

いつもなら「もちろんです」とか言って憤慨しそうなのに。

精神的に弱っているのだろう。

「それでいい。何があっても麗奈は奴の要求をのまない事。いいね?」

『……はい』

側にいないのがもどかしい。

抱き締めて慰めてやりたいのに……今は触れる事さえ出来ない。

彼女の顔にも髪にも触れられない。
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