腹黒王子の取扱説明書
でも、専務はそんな私の胸の内がわかるのか、黒い笑みを浮かべた。

「僕がタクシーで家まで送るよ。それに、今度はリシャールを追加で頼もうかな。ママも異論はないでしょう?」

異議あり!

私が住んでるのは会社の寮だし、送ってもらうわけにはいかない。

「もちろん」

叔母さんが口角を上げる。

裏切り者!

リシャール一本で私を売ったわね。

私は叔母さんをキッと睨み付ける。だが、叔母は悔しいくらいそ知らぬ顔をしている。

私が黙りを決め込むと、叔母さんがソファーから立ち上がって嬉々とした顔で内線をかけた。

そりゃあ、一本百万もするお酒頼まれたらオーナーとしては嬉しいわよね。

黒服のお兄さんが今度はリシャールのボトルを持ってくるが、私はボトルを憎らしげに睨んだまま触れもせず、仕事を放棄した。
< 25 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop