腹黒王子の取扱説明書
ここ数日、前田先生が昼食時間前になると、有名店のお弁当を差し入れしてくれる。

「あら、今日もあるわよ。私がリクエストしておいたから」

杏子がフフッと微笑む。

リクエスト?

最近、杏子と先生がやけに親しいと感じるのは気のせいだろうか?

定時後もこの二人、一緒に帰ってるし怪しい。

「こんにちは。今日は料亭胡蝶の幕の内弁当だ」

ノックの音がしたかと思うと、いつもと同じようにスーツ姿の前田先生が現れてにっこり微笑む。

先生は白衣の印象が強かったけど、ここ数日でこのスーツ姿もだいぶ慣れてきた。

今月はいつもの産業医の先生が腰を痛めたとかで、前田先生が代理をまた依頼されたらしい。

「すごーい豪華‼さすが先生」

美月ちゃんがそれはそれは嬉しそうに歓声をあげる。

料亭胡蝶って大物政治家とかが利用する高級料亭でしょう?

あのお弁当一つで四千円近くするんじゃない?
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