腹黒王子の取扱説明書
担当幹部を夜の会食場所に送り出すまでは、定時を何時間過ぎようが秘書は帰れない。

「打合せ長引いてるわね。これは配車の時間遅らせた方が良いかしら。ちょっと受付に行って来るわ」

腕を組みながら杏子が時計とにらめっこしてたかと思うと、席を立って姿を消す。

「あっ、私も会議室の後片付けしないと!」

美月ちゃんも慌てて席から立ち上がったかと思うと、お盆を持って応接室に向かった。

私も立ち上がって隣の給湯室に向かい、洗い物を片付ける。

「今日はもう十八時近いし、さすがにあのスケベ男は現れないわよね」

そう呟いた時だった。

杏子のデスクの内線が鳴った。

慌ててタオルで手を拭き内線を取る。

「はい、秘書室です」

内線は受付の女の子からだった。
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