腹黒王子の取扱説明書
俊が好きだと公言している受付の鈴木さん。

前回の事もあるし、彼女と話すのはちょっと苦手だ。

『長谷部さんは?』

「今席を外していますけど、そちらにいませんか?」

『いいえ。見かけませんでした。三条物産の佐々木常務が見えてます。特別応接室に案内しました。あまり待たせると失礼ですよ』

え?

でも、社長は今打合せ中だし、三条物産なんて社長の予定に入ってなかったはずだけど……。

それに、鈴木さんの最後の一言。

「待たせると失礼」なんて言われなくれもわかってるわよ。

ちょっとカチンときた。

「わかりました」

とりあえず内線を切って、杏子にメモを残す。

杏子はまだ戻って来ないし、私が行くしかない。

秘書室を出て特別応接室のドアをノックする。

「失礼します」

ドアを開けお辞儀をして顔を上げる。
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