腹黒王子の取扱説明書
欲しいものを手に入れるのに手段を選ばないだけだ。

医務室にこもって一時間程経っただろうか。

杏子から内線をもらい、俺達は例の応接室に向かった。

ちょうど麗奈が応接室に入った直後のようで、井澤の声が聞こえてくる。

しばらくすると、麗奈が俺の名前を叫んだ。

「俊ー」

その声に自分の身体が反応し、ドアを蹴破るような勢いで開ける。

視界に飛び込んできたのは、井澤が顔を近づけて麗奈の髪に触れている姿だった。

自分でも制御出来ないくらい、ふつふつと怒りが込み上げてくる。

今なら井澤に直接触れなくても、この怒りの感情だけで奴を瞬殺出来るような気がした。

そんな俺の殺気を感じたのか、亮が苦笑しながら背後からポンと俺の肩に手を置く。

「お前、頼むから殺すなよ。もっとクールになれ」
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