腹黒王子の取扱説明書
「長谷部専務、待って下さい!誤解なんです!」

俺が麗奈を連れて応接室を出ようとすると、井澤が俺を呼び止めた。

「言い訳は社長にでもするんだな。俺達の前にもう姿を見せるな!」

吐き捨てるように言うと、麗奈の肩を抱きながら応接室を出て専務室に向かう。

自室に入ると、彼女をソファーに座らせ自分もその横に腰かけた。

「……こんど……こそ……ダメだと……」

井澤の姿が見えなくなって安心したのか、麗奈が堰を切ったように泣き出した。

「うん」

「怖かっ……た」

俺はスーツのポケットからハンカチを取り出し、麗奈の涙を拭う。

「よく頑張った」

「……俊が戻ってきてくれて良かった。ニューヨークだってわかってたけど……俊のことしか頭に浮かんでこなくて……」

「麗奈が俺の名前を呼ぶの聞こえたよ」

「……すごく……すごく……会いたかった」

麗奈がそう言って俺に抱きついてくる。
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