腹黒王子の取扱説明書
「もう少しこのまま……」

甘えさせて……。

温かくて、優しい眠り……。

ずっとこうしていられればいいのに。

このまま朝になって、朝露みたいに綺麗に消えることが出来たらどんなに良いだろう。

でも、朝は必ず訪れる。

現実というものは、私には常に残酷だ。

「……う~ん」

身じろぎしながら目を開けると、氷のように冷たい双眸が何か観察するように私を見ていた。

「あっ……」

抱き枕って思ってたのは、どうやら専務らしい。

「おはよう」

専務が悪魔のような妖艶な笑みを浮かべる。

……いつもの爽やか王子じゃない。

やっぱりキャラが違う。

いや、それよりもまず自分の心配だ。
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