腹黒王子の取扱説明書
お札がヒラヒラと宙を舞い、シーツの上に落ちる。

「十万はあると思うよ」

普段の専務からは想像もつかない冷たい声。

私はすごく惨めだった。

なんだか娼婦みたい。

こんなお金いらないのに……。

でも、私が何を言ってもこの人は信じないだろう。

私は悔しくてシーツをぎゅっと握り締めた。

「君とは寝てないけど、これで杏子には近づかないでくれるかな」

顔は笑ってるけど、目が冷たい。

「お金が目的で杏子と友達になったわけじゃありません!」

私はキッと専務を睨み付けた。

「君の言葉、信用出来ると思う?」

私を突き刺すような厳しい視線。

専務の中では完全に私は悪女らしい。

「決めるのは杏子です。専務ではありません。服を着たいので出ていってくれませんか?」
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