腹黒王子の取扱説明書
ひどい……。

この人は悪魔だ。

この上なく美しくて、腹黒い悪魔がそこにいた。

私は唇を拭うと、憎らしげに専務を見た。

昨日この人を見てドキドキした自分が馬鹿みたい。

「結婚相手を探してるなら、もっと馬鹿な男を探した方がいい。杏子にもう会わないと約束するなら、いい男を紹介してあげてもいいよ」

どこまで私を見下せば気がすむのだろう。

あんなバイトしてた私も悪いけど、ここまで言われる筋合いはない。

「結構です!服を着たいので出ていってくれませんか?」

「君の下着姿ならもう見てるし、恥ずかしがる事はない。早くしないと、会社に遅れるんじゃないかな?」

専務は腕組をしてじっと私を見据える。

やっぱり、彼がドレスを脱がしたんだ。

私はそう確信する。
< 35 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop