腹黒王子の取扱説明書
「バッグも靴もブランドものじゃない、安物。何のためにあんなバイトをしている?男にでも貢ぐのか?」

「……ある意味、男に貢いでるんでしょうね」

実の父と弟に……。

でも、真実を言ったところで、あなたは信じないでしょう?

言うだけ無駄だ。

私の言葉に専務の表情が険しくなる。

彼に軽蔑されたって、私は構わない。

私は専務を見据える。

「必要ならタクシーを呼ぶが。部屋を出て右手にずっと進めば玄関だよ」

「タクシーは結構です。お邪魔しました」

私がドアノブに手を触れると、専務が私の肩をつかんで無理矢理振り向かせられた。

「忘れ物」

専務はそう言ってまた私の唇を奪う。
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