腹黒王子の取扱説明書
でも、彼は叩かれても涼しい顔をしていた。

「医務室に連れていくだけだよ」

冷静な声が響く。

「下ろして下さい。あなたに運ばれるのは嫌です。大丈夫です。自分で行きます」

私はギッと専務を睨み付けるが、彼は私を下ろしてはくれない。

「医務室に着く前に倒れるよ。身体がすごく熱い。もう起きているのもやっとなんじゃないか?」

「だとしても、あなたのお世話にはなりません」

私がそっぽを向くと、専務はとんでもないことを言った。

「反論する元気はあるんだ?でも、いい加減大人しくしないと、ここでキスするけど?」

……この人なら平気でやりそうな気がする。

私が大人しくなると、専務は須崎さんに声をかけた。

「須崎、後は頼んだよ。会議が終わったら、総務部長呼んどいて」

「へいへい。会社で子羊襲うなよ」

須崎さんが専務に向かってニッと笑う。
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