腹黒王子の取扱説明書
「ヤブ医者だな」

俺がわざとらしく溜め息をついてみせると、前田はフッと笑った。

「誰が診ても同じことを言うさ。それで、期待するような関係でなければどういう関係だ？女にあまり関わりたくない性分のお前が、積極的に関わってないか？」

亮がニヤニヤしながら俺の顔を見る。

本当に面倒くさい。

「妹の友人だ」

人に言える事はそれくらいしかない。

社長である親父にせっかく日本に戻ったんだから妹に声くらいかけろと言われ、昨日珍しく社食へ行ってみれば妹の杏子は中山麗奈と一緒にいた。

ちょっと二人の様子を見ていると、普段はクールな表情しか見せない杏子が彼女と打ち解けている。

気づけば、中山麗奈に自分から声をかけていた。

杏子に比べると小柄だが、小動物のようなつぶらな瞳は淡いブラウンで思わず引き込まれそうになる。

ダークブラウンの綺麗な長い髪はさらさらしていて、思わず触れたい衝動にかられた。
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