腹黒王子の取扱説明書
会議室で脚立から落ちた彼女を見た時、放っておけなかった。

普通なら、あの場は須崎に任せていたはずだ。

それなのに、今、俺はここにいる。

天使なのか、小悪魔なのか……。

この女がわからない。

「ふうん、で、その妹の友達に噛まれた?その唇のキズ」

亮の言葉で俺は現実に戻される。

彼が俺の唇を指差す。

……こいつなら絶対気づくと思った。

俺は冷ややかに亮を見据えると、わざとらしく首を傾げた。

「さあ」

「俺も昔女に噛まれた事あるんだよな。でも、そういう女って忘れられないぞ。俊もこの子にはまるかもな?」

「女にはまる?あり得ないな」

俺は平然を装って作り笑いする。

「俺はお前が女を溺愛するのを見てみたいけど」

「冗談はやめてくれるかな?」

「お前の意思は関係ない。いつの間にか女の事しか考えられなくなって、その女しか目に入らなくなる」
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