腹黒王子の取扱説明書
俺の質問に千田部長は首を傾げる。

質問の意図がわからないのだろう。

「……いいえ?」

「恐らく、あなたが脚立に登って電球の交換を一人で行えば、あなたも中山さんのように脚立から落ちるでしょう。僕が何が言いたいかわかりますか?」

「…いいえ」

「あなたは、本来ならば総務の管轄ではない仕事を勝手に受けて、部下を危険にさらしている。ルールを決めずに仕事をさせれば、また部下が怪我をしますよ。総務の社員が一人で電球交換をしているのを見かけたのは今日が初めてではありません」

「ですが、……うちがやらなければ円滑に物事が……」

「あなたの言い分も理解できますが、部下を危険にさらすわけにはいかない。総務で引き受けるのであれば、細かいルールを決めて、上に承認をもらってからにしてください。他の業務も同様ですよ。社長には僕から報告しておきます」

「あの……これは査定には……」

……自己保身の塊。
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