腹黒王子の取扱説明書
私みたいなパッとしない女と一緒だったのだから、彼に憧れてる女性社員はみんな面白くないはずだ。

でも、みんなが騒ぐような関係じゃない。

たまたま居合わせて、私を仕方なく医務室に運んだだけ。

役職が専務だから見てみぬ振りするわけにはいかなかった。

今朝あれだけ酷いことを言われたのだ。

私は勘違いなんかしない。

「だったら、なおさら今夜は兄の家でゆっくり休むのね」

杏子が何を企んでるのか知らないけど、にっこり微笑む。

私は思わずむせた。

専務の家?

冗談でしょう?

「ちょっと、大丈夫?兄にしっかり看病してもらいなさいよ」

杏子が私の背中を優しく撫でる。

「全然、大丈夫じゃない。どうしてそういう話になってるの?」

私の意思はどうなるの!

自分で思ったよりきつい口調になってしまった。

もう専務の家なんて頼まれたって行きたくない。

それに、これ以上彼に関わりたくない。
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