腹黒王子の取扱説明書
だが、取り乱しているのかバッグの中身を全部ぶちまけた。

可愛いピンクのポーチや赤い財布、紫のキーケースがマンションの通路に散らばる。

「……あっ、何やってるんだろう、私」

中山麗奈はしゃがみ込んでバッグの中身を拾い集める。

俺も手伝おうと身を屈めると彼女は俺に言った。

「専務の手が汚れますから。私一人で大丈夫です」

昨日彼女と会ったばかりだけど、一つわかった事がある。

彼女の「大丈夫です」は当てにならない。

辛い時ほどこの言葉を口にする。

中山麗奈が立ち上がり、キーケースから鍵を取り出してドアの鍵を開ける。

すると、玄関に男物のシューズが一足置いてあった。

「寮に若い男でも連れ込んでるの?」

俺が冷ややかな目で彼女を見ると、彼女はすかさず否定した。

「違います」
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