モテすぎる先輩の溺甘♡注意報
「今みたいに触れられたくない。あたしはあたしを好きでいてくれる人じゃないとやなの」
「……」
「だから、もう話しかけたりしない。好きにならない。その代わり、ひーくんも話しかけないで」
「……」
「さようなら、ひーくん」
ひーくんに背を向けていたから、どんな顔をしていたのかは分からない。
でも、あたしが望んでる顔をしてないことだけは想像できる。
触れられたくないとか好きじゃないとか言ったけど、どっちも心から思ってるわけじゃない。
確かに触れられてムカつく気持ちはあったけど、嫌な気持ちはしなかったのが事実。
どうしても頭に浮かぶのはその前に他の女の子に触れていた光景で………すごく胸の奥が締め付けられる。
やっぱりあたしだけを好きでいてくれる人と恋愛がしたい。
その他大勢の女の子の仲間入りはしたくない。
……そう思うということは、そこまでひーくんのことを好きじゃなかったんだなと改めて実感する。
不思議と涙は出なかった。
まだ傷は浅い。大丈夫。
自分で自分を励ましながら………あたしは葉月たちが待つ場所へと向かった。