記憶堂書店
――――……
次にあかりが目を開けると、見覚えのある公園にポツンと立っていた。
周辺にはブランコに滑り台、シーソー、砂場がある。
「ここは……」
そこは高台にあって、公園の端から下を覗くと最寄りの駅が見える。そうだ。ここはあかりが小学校まで住んでいた町の公園だった。
この公園で弟と一緒によく遊んでいた。
夕方になると父が帰るまでここで遊ぶ。公園から駅を覗き、父が帰る電車を見つけ、父が駅から出てくると公園を飛び出して迎えに行っていた。
「懐かしい」
すると突然、公園の中央にある大きな時計が夕焼け小焼けの音楽を鳴らし、ハッとする。
この時計は夕方の五時になるとそれを知らせるように音楽が鳴るのだ。
一緒に遊んでいた子供たちはそれを合図にみんな「また明日ね」と家へ帰って行く。
父を待つあかりと弟はいつも最後になっていた。
あかりは懐かしく思いながら、そのまま砂場に目を向けるとそこには幼い姉弟が寄り添って砂山を作っていた。
「あれは」
あかりの目に涙が浮かぶ。
女の子は黄色いひまわり柄のワンピース、男の子は車の絵が書いてある白いTシャツに半ズボンを穿いている。
よく覚えている。
あれは幼いころのあかりと弟の大樹だ。
「大ちゃん」
あかりが思わず名を呼ぶが、こちらの声は聞こえないのかふたりは振り向かない。
ふたりには自分が見えていないのだと知る。
すると幼いあかりが公園の端まで行き、駅の方を眺めて弟に叫んだ。
「あ、大ちゃん。お父さんが帰って来たよ」
そう声をかけると弟が走り寄ってきた。
「本当だー」