記憶堂書店


「一週間経っていたのね……。あんなこと初めてでエネルギー使ったし、眠っていたのかしら」

あずみは困ったように笑いながらも、困惑はしていないようだった。
龍臣も、「そうなのかもな」と軽く同意するに留めた。あまり追及しても意味がないような気がする。
あれだけ暴れたのだ、疲れと悲しみで深く眠っていた。そして一週間経っていたのだと考えるのも不思議ではない。
あずみは幽霊だ。
龍臣にもあずみ自身にもわからないことが起こるのだろう。

「修ちゃんのお祖母さんはどんな記憶を見るのかしら」
「さぁな。でもたぶん……」

きっと花江についての記憶だろう。
源助さんはどれだけ願っても記憶の本は現れなかった。
そして、妻の夏代には現れたのだ。夏代は優しくて明るくて、でも控えめで物静かな人だという印象が強い。しかし、その心には強く後悔した出来事があったのだろう。

龍臣は夏代の記憶の本をそっとカウンターへしまった。








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