記憶堂書店
「お前……、いつから見ていた?」
そう聞くと、修也は気まずそうに目線を外しながら頬をポリポリとかいた。
「えっと……、あずみさんとお礼う云々って話していた辺りからかな?」
「ほとんど初めからじゃないか」
龍臣は頭を抱えた。
どうしてもっと早く声をかけてくれなかったんだと呟くが修也は苦笑いしかしない。
恥ずかしさと気まずさから顔から火が出そうだ。
しかも相手は幽霊のあずみだ。
どう説明していいかもわからない。
「いや、言い訳はいいよ。大丈夫、二人の関係はわかっているから」
「関係って何だよ。変な言い方するなよ」
龍臣は恥ずかしさで顔を上げられないでいるが、修也は逆にケロッとして来ている。
「いや、だってあずみさんの気持ちはわかっているし、龍臣君だってねぇ?」
「俺は別に……」
そう否定しようとしたが、修也は生暖かい目線を寄越す。
「その眼、ムカつくな」
「怒らないでよ。だって龍臣君自身は認めようとしないのか、知らないふりしているのかわからないけど、俺からしたらもろ分かりだよ?」
「何の話か分からない。とにかく、今見たことは忘れろ。いいな?」
そう睨み付けながらすごむと、修也は苦笑しながら大人しく頷いた。
「で? お前は何しに来たんだっけ?」
「だから、お礼を言おうと追いかけて来たんだよ」
修也は呆れた様な様子を見せた。
そういえば最初にそんなことを言っていた気がした。わざわざそれを言いに追いかけて来てくれたのか。
「龍臣君、両親の事、色々と話してくれてありがとう。今度、父親のお墓参りに行ってみるよ。母親については、大人になったら探してみようかと思う」
「そうか……」
龍臣は少しホッとした。
修也が思ったより落ち着いていたし、両親についても少しでもプラスに考えてくれているようだ。
「実は父親が死んでいることは知っていたんだ。病気で死んでいるって、昔酔った祖父ちゃんが漏らしたことがあって。祖父ちゃんは忘れているけどね。でも母親のことはわからなかった。ちょぅとショックではあるけど、でもずっと俺たち家族を思ってくれていたんだなって感じたし、いつかは少しでも会えたらなって思う」
「お前がそうしたいなら誰にも留める権利はないよ。お前はもう話が通じない子供でもないだろう」
そう話すと、修也は安心したように微笑んだ。
「ありがとう。じゃぁ、俺行くね」
そう爽やかに言い残して修也は帰って行った。