記憶堂書店
「僕たちが見られるのはここまでです。どうでしたか?」
龍臣の言葉にあかりは立ち上がり、公園を見つめた。
「過去は変えられないのなら、戻っても何も変わらないんですよね」
その言葉はまるで念押しするかのそうだ。
龍臣は深く頷いた。
「ええ。事態は何一つ変わっていません」
「そうですよね……。でもね、店長さん。私はホッとしました。もう一つの世界の人生を視ることができて、弟がこの世界では無事だと知ってなんだか不思議だけど安心したんです」
「そうですか」
「私のいる世界では何も変わっていなくても、もうひとつの世界で弟は無事でいるとわかったからでしょうか」
あかりは泣きはらした、しかしどこかすっきりした表情で龍臣に笑顔を向けた。
その顔には来た時のような暗い影はほとんどない。
「そうかもしれませんね」
「私、後悔は一生します。悔やみます。自分を恨みます。でも、少し気持ちが軽くなるくらいは神様も許してくれますよね」
「ええ。神様どころか、弟さんも許していると思いますよ」
龍臣の言葉にあかりは嬉しそうににっこりとほほ笑んだ。
「では帰りましょうか」
「はい」
龍臣がそう告げると、あかりは目の前が白くなり、意識を飛ばした――――……