記憶堂書店
夏休みを謳歌するのはいいことだが、修也にはその前にやることがあったはずだ。
「お前、来年受験だろう? 塾とか補習とか受けて勉強しろよ」
「まだ受験するとは決めていないよ。それに仮にそうなったとしても来年の夏に頑張ればいい話であって、今年は遊ぶって決めたんだ」
そんな悠長でいいのか?
必死に勉強をしなくてもそこそこ成績が良かった龍臣にとって、そういったことはあまりよくわからなかった。
「うちの職場は遊び場じゃないんだぞ」
ほぼ毎日学校帰りに寄る修也にとって、それは今さらなのだが。今朝の龍臣は少し機嫌が悪く、言わずにはいられなかった。しかし修也にとってはどこ吹く風だ。今更そんなことを言われても響くわけがない。
「それに龍臣君、今日うちの高校に来る予定だろ?」
「なんで知っているんだよ?」
実は今日はこのあと修也が通う高校に行く予定があった。そこの歴史の先生から記憶堂にあった歴史書を図書室に納品してほしいと依頼があったのだ。