記憶堂書店
修也の通う桃乃塚学院はスポーツが強い高校で、勉学よりはそちらに力を入れているようだった。生徒のほとんどは部活に入っており、修也のように帰宅部は少数派らしい。
ある意味、勉強も苦手な修也には合っている高校だったのだろう。
本を持って学校に到着してから、玄関で来訪者受付をする。修也は昇降口から先に校内へ入っていた。スリッパを履いて昇降口へ行くと修也がジャージーを着た男の先生となにやら話をしていた。
背は龍臣よりは小柄だが、短髪でガッチリとした体格の先生だ。いかにも体育教師といった雰囲気だが、修也はどこか逃げ腰だ。近づいて来た龍臣に気がつくと、まるで『良いタイミング』とでも言いたそうな表情でこちらへ駆け寄ってくる。
「じゃぁ先生、俺やることがあるからこれで」
「あ、おい!」
ジャージー姿の先生はもの言いたげに修也を見るが、龍臣に気が付くと軽く会釈して去っていった。
「先生と話さなくて良かったのか?」
「別に。あの先生、体育教師なんだけど俺に会うたびに部活に入れってうるさいんだ。でも今からやりたい部活もないし、一年ならともかく二年になってからだと入りにくいし今更でしょう」
どこかうんざりしたように話す修也に苦笑した。先生としてはスポーツが盛んな高校で帰宅部にしておくのはもったいないと考えているのかもしれない。こう見えて修也は勉強は苦手だが、スポーツはそこそこ出来たはずだ。
だからこそ言わずにはいられないのだろう。