記憶堂書店
修也に案内されて、本校舎の隣にある二階建ての建物に案内される。そこには科学室や理科室、美術室、視聴覚室などのいわゆる移動教室が入っており、そこの一角に図書室があるのだという。夏休みということもあってか、生徒の姿はなく遠くから部活をしている声が届くくらいに静かだった。
龍臣は注文された本を二冊抱えて、修也の後について図書室へ向かった。
「加賀先生。記憶堂の店主さんを案内してきましたー」
修也は図書室の扉を開けて中に声をかけると、本棚の間から「はぁーい」とのんびりした声が聞こえてきた。
「ありがとう、修也君」
現れた女性は40代前半くらいで、背が高く、ストレートの黒髪が良く似合う可愛らしい女性だった。
加賀先生と呼ばれたその女性は龍臣を見て軽く会釈する。
「暑い中、わざわざすみません。司書の加賀です」
「こんにちは。記憶堂書店の柊木です。これ、ご注文の歴史書です」
「はい、伺っています。お預かりしますね」
龍臣が歴史書が入った紙袋を掲げた時、「あっ」と思わず声が出てしまった。