記憶堂書店
「そんなに悩むなら、話したらどうなのよ」
唐突にそう声がして、龍臣はハッと振り返る。
「あずみさん」
修也も驚いているようだ。目線の先は二階へ続く階段付近を見ており、古い階段がぎしぎしと音を立てている。どうやらあずみが起きて降りてきているようだった。
「あずみさん、もう起きたの?」
修也は外を見てから目を丸くして尋ねる。確かにまだ夕方ではない。
龍臣はまただ、と思った。
最近、こうして昼間に起きてくることが増えている。どうしてなのだろう。幽霊が夜ばかり現れるものとは限らないが、そればかりではなく、どうも近ごろのあずみはどこか様子がおかしい。
修也はあずみを昼間に見るのが珍しいのかぽかんとしている。
そして、説明を求めるかのように龍臣をチラッとみた。しかし、龍臣にもその理由はわからず、首を軽くひねるだけ。
あずみという幽霊の生活リズムが変わっただけなのか、他に理由があるのかすらもわからない。
しかし、あずみはそんな二人の様子などお構いなしに呆れたような怒ったような声を出す。
「龍臣もうじうじ悩んでいないで修ちゃんに話しちゃえばいいのよ」
「あずみ」
話を聞いていたのだろう。
龍臣は軽く制するが、あずみは聞こうとしない。
「修ちゃんの母親について知っているのはあの先生だけじゃぁないのよ」
突然の話に修也が戸惑っている。
「え、どういうこと?」