俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜

恋と情と敬意

水泳に復帰した、駿祐のタイムは低迷中。


「おまえと同じ怪我から復帰して、第一線で活躍しているスポーツ選手だっているんだぞ!」


その言葉に、遮二無二練習に励んではみたものの、

なんとなく、膝をかばってしまう泳ぎが、左右のバランスを崩し、
それをカバーしようとして、腰に負担をかけてしまう。


まだ足が、まともじゃないうちから、トレーニングを始めていた上半身には、
焦りからムリがたたり、
肩に痛みも現われだす始末。


なにしろ、あの時の痛みを経験している駿祐にとって、
下半身の筋力トレーニングは、最大の課題となっていた。


そう、そのトラウマが精神的に追い詰め
さらに、
身体中が悲鳴をあげだした原因となっているのだ。



今の状態では、
残念にも、来シーズンの大会云々など、まったくもって無理な話で、
しばらく、ゆっくりするようにと
コーチ陣から、命令とも言えるアドバイスを受けた。


そのことを、琴乃には一切話していない駿祐との
二人の会話には、いつしか、
暗黙の了解で、水泳の話題は出なくなっていった。


そんなことくらい、
駅でたまに会う慶太から
それとなく聞いて知っていた琴乃も、
何と言葉をかけたものか分からなかったし、

話題にしたくないくらい、悔しいに違いないと、
知らないフリを通すしかなかった。


なんだかんだ言っても、
兄のことを語る慶太の話は、
駿祐の様子を、目で見たように想像させるほどのものだった。
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