俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
「え?!」

「俺と別れて、慶太と」

「なんでそうなるの?!あたしはただ、自分の存在が」

「俺だって!!」

「!…。」


受話器の向うで、何やら大きな物音がしたのを、琴乃は聞き逃さなかった。


「駿?大丈夫?」

「…こんな話のつもりじゃなかったんだ…」

「!」

「ごめん…一回、切るよ。」

「え、あ、ちょっと!」



通信は途絶え…
気がつけば、琴乃の目からは、次々と涙が溢れ出ていた。


別れ話をされるものと、勝手に決めつけ、覚悟していた琴乃は、
少しでもダメージを少なくしようと、強気で、
自から、別れ話を切り出す形にしてしまっていた。


けど、駿祐の話は、どうやら違かったようで…


駿祐は、どんな気持ちで、
違う方向へと進んでいく話を、食い止めようとしていたのだろう?


そして、何を言おうとしていたのだろう?


何度も、早く掛け直さなければと、受話器を持つが、
その手は異常に震え、
声だって、嗚咽で、まともに出せない状況だった。


愚かな自分を情けなく思う気持ちと、
踏み躙ってしまった駿祐の気持ちを、自分に置き換えてみては、
怒りにも似た、なんとも言えない悲しみに…

うつ伏せに、ベッドに倒れこんだ琴乃は、
止めどなく溢れる涙で濡れていく枕で、泣き声を隠しながら、いつしか寝入っていた。
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