俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜

男心と残暑の空

強化コーチのもと
大会に向けて、駿祐の体調は万全だった。


タイムも、自己ベストまで、あとほんのわずかといった記録も打ち出し、

残りの数日で、その調整も可能かと、周りも期待し、ひたすら練習に励んでいた矢先、それはおこった。


駿祐の右足首に激痛が…


この大事な時期、直ちに医師に診てもらったところ、
剥離骨折との診断。


しばらくは安静にしていなければならず、
大会など間に合うはずがなかった。


「ついてねーなー、俺。なぁんか、運を使い果たしたって感じ?」

まわりにそう言ってみせる駿祐の表情は、かなり落ち込んで見えていた。

が、

膝の怪我から、一度は、良いとこまで復帰できた事実を胸に、
いつまでも、悔やんでばかりもいられないと
自分を奮い立たすのだった。


しかし、慶太との賭けは、今回限りという話の流れ

本当に後悔は無いのかと問いただされれば、
あの時、期限を決めてしまったことが、唯一悔やまれてならず…
だからと言って、だらだらと先延ばしにしても、緊張感に欠けていたに違い。


なにしろ今回は、自分自身も確信していたほど、自信があったのだ。


(今まで優等生やってきたのに、この仕打ちかよ!
 なんかもう、疲れたなぁ。
…このくらいのことしても、罪にはならないよな?)

そう思った次の瞬間、
携帯電話を取出した駿祐は、
押し慣れた数字の番号ボタンを、指でなぞっていた。
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