俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
まさか、駿祐と琴乃が、
二人、一緒に居るところに出くわすとは、思いもしなかった慶太は、

“むしの知らせ”とはこのことか、
勝手に足が向かっていて
気が付けば、二人の前に立っていた。


情報通信の便利になった、この世の中で、
今日のことがバレない訳が無いとは思ってはいたものの、

実は、ふたりに見透かされていたことを、
さらに、気遣われることで、

自分が男として“まだまだ”なんだと、思い知らされるのだった。


「兄貴と、なんか話した?」

「全然。」

「だって、今一緒に居たじゃん。」

「タバコ買いに出てきたって言ってた。」

「…誰の?」

「え、自分のじゃないの?」

「あの人、タバコ吸わねーだろ。」

「でも、水泳辞めたって聞いてたから…」

「何それ?俺、知らねーよ、そんなこと。」

「…」

「親が俺に言わねーはずないし。…紺野くんのかなぁ?琴乃と話す口実に。」

「…じゃあ、ケイちゃんが、もう少しあとに現われれば、色々聞き出すことできたかなぁ?」

「色々?」

「なんかね、駿、感じが変わったんだよね〜。」

「どんな風に?」

「誰とでも笑顔で、よく喋ってた!」

「それは、やきもちなのでは?」

「皆も言ってたの!“昔もあんなだったっけか?”って!なんて言うのか…気を使えるようになったって言うか…」

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