俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
「おまえはホラ、当事者だから、まわりが見えなくなってるんだって思って…」

「思って?」

「いつかは目が覚めるだろうってさ」

その瞬間、

慶太は菊地亮を押し倒し、
馬乗りになると、その胸ぐらを掴んでいた。


「ふざけんなテメー!」

「だから悪かったって!やめろっ!」

「おまえに何がわかんだよ!」


「ケータ!大会が近いだろ!まわりが見てるっ!」


いつもは仲の良い二人のことだ、
周りも、ふざけ合っているのかどうか、半信半疑で、その様子を見守っていた。


「俺じゃねーし!」

そう言って、慶太を払い除けた菊地亮は、起き上がり

「俺が言ったんじゃねーぞ。まぁ、ちょっとは思ったけど…。」と

手で髪型を整えている。


そして、まだ座り込んでいる慶太に向かって、

「でも、今は噂も…もう、そーでもないから。」

そう言って、手を差し伸べたが、

その手をとらずに立ち上がった慶太は、
ポンポンと制服を叩きながら、階段の方へと歩きだした。


菊地も黙ってその後を、
序々に横へと並んでいき、
しばらく二人は、無言で歩いていた。


すると突然、
前を向いたままで菊地は言った。


「よく分かんねーけど、やっぱ琴乃さんって、表だった人じゃないかもな。」

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