俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜

その言葉が言えなくて

6月に入ると、寺岡兄弟にとって、本格的なシーズン到来となった。


今や、マークされるようになった駿祐は、今まで以上に練習に取り組み、
その結果を見せつけた。


それは、慶太にも影響を与え、
さらに良い方向へと、全力前進させるのだった。



言われるまでもなく、
総体の県大会には、琴乃も応援に出向いていた。


知ってか知らずか、
いや、たとえ、会場に琴乃がいなかったにしても、
今の慶太は、意気込みも精神的にも絶好調。

去年とは全くの別人だった。



その成長ぶりに関心しながら、安心して観ていられる琴乃の耳に、
偶然なのか、意図的になのか、
聞くに耐えない会話が入いってきた。


「あの女だよ、ケータの!」

「どれどれ?どいつ?」

「へー。」

「なんか、ダサくなあい?」

「笑っちゃってるし。」

「だってさ、“おネーさんが何でも教えてあ・げ・る”的な感じかと思ってたからぁ!」

「ホント〜!違った違った!あははは、ウケる!」

「なんか、合わなくない?どこがイイんだろ?」

「やっぱぁ…ねぇ!」

「ヤ〜!!!」

「だって、そーゆーことなんじゃないの〜!?」



その場から立ち去りたくても、
体は震え、足がすくんで動けずにいた琴乃は、
ひたすら、聞こえないふりをするしかなかった。
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