俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
夏休み中、
たまに空いた休日ぐらい、ゆっくり休めば良いものの、
そんな時こそ体がウズき、
気分転換とでも言うのか、サーフィンがしたくなるようで、

たいして上手くもないくせに、
慶太は琴乃を連れ出し、海へと向かった。


前日に、琴乃から聞いていた亜希は、
先に着いて待っていた。


1つ年上の彼氏は、就職活動で忙しく、
この夏は、あまり遊んでる場合ではないらしい。


「あたしは来年が就活じゃん。その分、遊んでられるのも今年までだからさ…来年、日焼けしてたらヤバいもんねぇ。」

「彼氏とすれ違っちゃうね。」

「あたし、基本的に男に依存しないタイプだから、大丈夫。」

「…」


二人が波に乗りはじめると、独りになる琴乃は
その間、考える時間がありすぎた。


お世辞でもウマいとは言えないが、
黙々とサーフィンに熱中する慶太のその姿勢は、
琴乃の目を釘づけにした。


好奇心旺盛のわんぱく少年が、
めけずに何度でもトライするシャカリキな様子と、
このあいだの試合で見せた、あの悔しがった表情。

いつも見せてる無邪気な態度に、
抱き寄せてくれる時の、
たくましくて優しいぬくもり…

その時の真剣な瞳には、琴乃だけが写り、
なんの不安も無いはずなのに、

こうして遠くから見ていると、
その少年は、このままどこかへ行ってしまうような気がしてならない。

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