俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
校門で会った部員や
ロッカールームでの何人かが、
昨日の今日で
自分に気を使っていることなど、とっくに気が付いていた。

むしろ予想どおり。


そんな時でも、

「昨日は、センチメンタルな僕をお見せしちゃって!そんな時もアルんだと、お分り頂けたかな?君たち!」

こんな風に、陽気に振る舞えてしまうのが慶太だ。


自分に嘘をついてでも、
どんな状況にも対応できてしまう。


だから今、
無防備に琴乃に会いでもしたら、
強がって、
駿祐のもとへ行かせてしまいそうな気がしていた。


何だかんだ言っても、
駿祐のことを、男として認めているからこそ、
敵対してしまう慶太は、

気付かないフリをしているが、
ときどき見せる、琴乃のせつなそうな表情に、
どう対応したものか分からなくなる時
おどけてみせ、話も聞いてやれない自分を、

結局、“弟で末っ子”なんだと、思い知らされる。


そんな時、
見習おうとする兄は、存在が大きすぎて、
マネすることもできないでいる自分に、優しく手をさしのべる。

でも、その手は、
掴もうとするが届かずに、
未だに、
その手を追いかけているだけで、
駿祐より前に出たことがない。


完全なるコンプレックスだ!


(ソレがある限り、琴乃とは、ずっとこのままなんじゃないか?)


駿祐が、そう言いたかったんだとは、まだ、高校生の慶太には、解読でずにいた。
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