俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜

コーチの場合

琴乃にすべてを打ち明けることができたし、
自分の気持ちを伝えることもできた。

なのに、

なぜかスッキリしない慶太だった。


きっと、

琴乃の言った言葉が、そうさせているのだろう。


自分が、駿祐に対して劣等感を抱いていることは、

意識して口にすることで、
気持ちを貯め込むことを防ぎ、

時に、張り合うことで、
必要以上に反発することにもならずに済んでいるのだと、

自分なりにコントロールして、
反抗期の最中も頑張ってきたつもりだった。


そんな反面で、
駿祐に欠けているところを、自分の手柄にすることで、
喜びや、やりがいに浸っている部分も、自分にはあった。


幼い頃は、優しくしてくれる兄に対する、フォローのつもりだったのだが、

いつからだろうか?

特に、きっかけがあったわけではないのだが、

これも一つの、心の成長であって、
誰にでも芽生えうることなのではないだろうか?


駿祐も、そうだったにたがいない。


慶太は、その快感を口にしたことはなかった。

だから、誰も、そんな自分に、
気づいていないと思っていた。


が、駿祐は分かっていた。

なぜならば、
駿祐も同じ気持ちで、水泳に没頭していたからだ。


だからこそ、琴乃のことが心配だった。

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