俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
俺は慌てて立ち上がり、
気付かないフリをして、慰めることなどはしなかった。

そうでもしないと、
せっかくの決断が、もろくも砕け散り、
結局、何も変わらない気がしたからだ。


「なっ!そうしよ!その方が良い!」

「…どのくらい?」

「…それは…お互いが“もうこだわってないよ”って歳になるまでかな!」


気持ちとはうらはらに、精一杯おどけてみせる俺。


「そんな…」

「あ、でも!その間に、他に気になる人が現われたら…そのときは…自分の気持ちに、正直になる事!」

「これじゃあ、別れ話みたいじゃん!」

「違うよぉ。自分を見つめ直すための条件を言ったんだよ。」


すると琴乃は、俺に詰め寄りこう言った。

「なんでそんな風に笑ってられるの?!」


頼りない、その泣きべそ顔を引っ提げ、尋ねてくる仕草は
俺に、年上なんて事など忘れさせてくれる。

でも、

琴乃が“年下の彼氏”ということにこだわる理由は、
やはり、俺の頼りなさが、そうさせているワケで、

俺が兄貴を意識している間は、

“男としてまだまだだ”ってことくらい、
自分が一番分かっていた。


そうは言っても、
こんな俺にも、それなりの男の意地があった。


「じゃあ琴乃ちゃんは、もし今、兄貴がまた怪我しても心配しない?」

「…それは」

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