俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
「ども。」

そう一言だけ言って、
つい、目をそらす琴乃に対し、

「前に一度…プールに来てくれましたよね?」


(あれ?…そこ?)


慶太は、覚えていないのか?
それとも、
あえて、気付かないフリをしてくてたのか?


「あの日だけでしたよね。もっと来てくれれば良いのに。」

「あたしは…あんまり、見本にならない先輩だから。」

「そんなことナイですよ!やっぱ、緊張感が出ますから。」

「それこそ、君のお兄さんが来た方が…ねぇ…」

琴乃が、言葉をつまらせたその隙に、

「へー!後輩思いなのは、俺だけかと思ってた。」


上手く会話に入ってくる紺野の機転は、今でも健在だった。


「藤崎とかも来たか?」

「あ〜、何度か来てくれましたよ。」

「アイツだって忙しいのになぁ。」

「紺野くん、今年も来てくれるんすよね!」

「もう、俺が関わった後輩も居ねーしなぁ。極めつけに、顧問も変わるとなると、ちょっとな〜。」

「紺野は受験で、それどころじゃないんだよねぇ!」

「じゃあ、琴乃ちゃんだって、どうなんだよ!」

「うん、まあ…目星はつけたけど…」

「先輩方、やめましょ!今、俺、マジでその手の話…シビアなんすよ。」

「あ、だよなぁ…悪ィ!」

「でも、水泳は続けるんでしょ?」

「琴乃ちゃん、それはさぁ」
< 39 / 238 >

この作品をシェア

pagetop