俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
電話を切ったあと、
琴乃は、ふと思った。


「やっぱり、知ってたかぁ。それにしても、声、そっくりだったな…」


受話器から聞こえる声が、
寺岡と名乗ったときは、
一瞬、たじろいだ琴乃だったが、

留守だと告げると、
ソレを真に受けた様子から、慶太の方だと判断し、
安心して話を続けたのだった。


駿祐なら、琴乃に姉妹がいないことなど知っているし、

まず、電話など、かけてくるはずがない。


それにしても、弟と電話で話すなんて…

あの、夏祭り以来だった。


「ホントに、気がついてないのかな?メールのことは知ってたくせに。」


慶太に対し、警戒心を抱きはじめる琴乃だった。



それでも、琴乃の周りでは、
穏やかな日々が流れていた。


プールの使用許可がおりても、梅雨入りで、屋外プールでは、満足に泳ぐことのできなかった琴乃達は、

個人的に、公共施設などを利用しながらも、あまり、練習もできぬまま、

県大会へと挑むかたちとなった。



水泳部存続の為、参加することに意義がある、琴乃達のとことは違って

駿祐の学校は、
どの種目も、上位に食い込んでくる。


気になどとめなくとも
寺岡駿祐の名は、耳に飛び込んできた。

『決勝、ダントツで逃げ切り、関東大会ヘ進出決定!』
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