俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
電車の中では、さっきのことなど、気にしてないフリをしながら、
駿祐の話を聞いてる様で

実は、他のコトを考えていた琴乃。


その日は、ふたりにとって
初めてのデートだった。


中学の頃、
散歩のようなものは、したことがあったが、

遊びに行くときは、必ず
紺野だったり、亜希だったり、
いつも、他に誰かがいたものだ。


水族館を提案したのは琴乃だった。


至近距離のわりに、会話の無い映画館や、
もり立てて、会話のありすぎる遊園地に比べ、

つきあいはじめのカップルには、
話のきっかけの探し易い
動物系がベストなのだと何かで聞いたことがある。


ふたりと同様、水つながりで、
動物園より、魚の方を選んだわけだが…

その言い伝え通り、

館内では自然に、感心して、驚いたり笑ったりと、
会話ははずみ、ふたりの距離も縮んでいった。


最初はどうなるかと思っていた琴乃だったが、

時間が経つにつれ、昔の様に…
いや、今まで見たことの無い

随分と、男らしくなった体格にもかかわらず、
子供のように、はしゃぎ、
優しい表情で笑う駿祐をみると、

なぜが、心が癒されていくのがわかった。

そして、
“この人のそばに居たい”という、
自分の気持ちに気づき、

(イジイジしても仕方ない…駿が、あたしを好きって言ってくれたんだ!)と

割り切ることを心に決めた。

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