俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
中学生という多感な時代には、
それぞれに皆、さまざまな思いを抱えているものだ。


順風満帆にも見える兄が、
自分に対し、そんな気持ちでいたなんてことなど、想像もしなかった慶太は、

あともう少ししたら、駿祐が家から出ていくことを、心待ちにしていた自分の頭を、
得体の知らない何かで、叩かれたような気分だった。


そして、そんな思春期に、ひと足先に迷い込んでいた駿祐は、
自分に、何かしらの敵対心を持つ、慶太の心境が読める分、

その矛先が、琴乃に向けられぬようにとだけを心配して、対策を考えていた。


慶太の、琴乃への秘かな思いになど、気が付くハズもなく、
あれから、しばらく考えて、
今が、
その胸のうちを伝える恰好チャンスだと、
いつになく、その物腰は鋭かった。



お互いが、そんな思いでいることなど、多分、知らぬまま、

まだ時折、冷たい風が首元を竦ませては、
春の兆しが見え隠れする三月…


琴乃は、地元の駅から3駅程といった近さの、希望したとおりの大学に合格。


二ヶ所の高校を受験して、両校とも合格した慶太はと言うと、
わざわざ、
兄が自分の名を残して、卒業していく高校の方を選択した。


駿祐も、ぼちぼち荷造りをはじめ、
休日には、何度か東京へと足を運ぶことなどもあり…

それぞれ、進路も決まって、
不安と期待を胸に、
まなざしは、新しい季節へと向けられていった。
< 87 / 238 >

この作品をシェア

pagetop